「外見至上主義」の王獒春は、称賛されるタイプの人物とは程遠い存在です。
最初はホステル編で、磯野聡の友人として紹介されるサポートキャラクターでした。
しかし、次第に彼の内に秘めた邪悪さが露わになり、最終的には非常に痛ましい結末を辿ってしまいます。
その背後には、王獒春の悲しい過去が深く影響しているのです。
この記事では王獒春の過去や、最後について説明を進めます。
王獒春の過去は辛苦だった？
王獒春は「オウゴウシュン」と読みます。
物語内ではホステル編での登場。
外見上は普通の高校生に見えましたが、実際は厳格な親からの教育や規則にうんざりしていました。
それに反抗する勇気もなく、親の定めたレールを順調に歩んでいたのです。
そんな獒春は、磯野聡との出会いによって人生が大きく変わります。
その後、自由に生きる聡の姿に強い憧れと尊敬を感じ、これが獒春を狂わせる出発点となりました。
なぜ、模範生徒だった獒春は軌道を逸れ、悲しい過去を持つことになったのでしょうか？
これから、さらに詳しく掘り下げていきます。
高校時代は模範生徒
王獒春は現在の姿からは想像もつかない、どこにでもいる模範生徒の高校生でした。
穂乃果や花宮らと同じ高校です。
しばしば穂乃果と共に行動しており、初めての登場も2人。
初期の印象では親の指示に従い、塾へ行ったり勉強に励むような真面目な学生でした。
そして、穂乃果や花宮との関係は良好で、頻繁に一緒に過ごしています。
厳格な家庭環境で育った
王獒春の家庭は極めて厳格で、彼はいわゆるスパルタ教育を受けていました。
内心では大きなプレッシャーを感じていた獒春ですが、親に反抗する勇気を出せず不満を持ちます。
この厳しい家庭環境が、彼を極端な性格に変貌させる一因となったのです。
温かい家族への憧れを抱く
獒春は、自分の家庭環境に嫌気が差していましたが、聡や芹那たちとの出会いを通じて、家族というものへの憧れを強く抱くようになります。
獒春の家庭は、子供の将来を第一に考え、厳しい教育を施していたことは明らかですが、それは獒春にとっては自分の意志が尊重されず、自由が制限された生活でした。
一方、聡や芹那たちは、そもそも家族という概念が欠如していた状況です。
芹那は親のいない廃墟で孤独に生活しており、そこにホームレス生活をしていた聡がある日、突然現れます。
聡は学校にも行っておらず、常識がなく、自分の異常性に疑問を抱くこともありません。
他者に危害を感じた際は、容赦なく攻撃するなど、まるで野生の動物のような存在でした。
しかし、彼らは何にも縛られずに生きる自由さを持っていたことで、獒春とは正反対の存在であったと言えます。
聡が芹那や穂乃果たちと出会い、徐々に人の心を理解し始め、人間らしさを取り戻す過程で、血の繋がりのない温かな家族を形成していく姿に、獒春は強い憧れを感じたのです。
聡に魅了され心酔する
自由奔放さと、社会の枠組みから離れて純粋な悪を貫く聡に、獒春は強い憧れを抱き次第に心酔していきます。
獒春が憧れる聡とは対照的に、聡自身は獒春の想いを理解できませんでした。
聡にとっては、獒春が家庭を持ち、さらにはお金にも恵まれた環境で育っていることから、彼の深い憧れが理解できなかったのです。
その結果、聡が築こうとした新しい家族の中に獒春の居場所はなく、これに獒春は大きなショックを受けます。
これがきっかけとなり、獒春は聡に認められようと、さらに必死になっていくのでした。
刺激を求め悪の道を歩む
聡は、純朴だった獒春に対して「自分のようになっ欲しくない」と願い、あえて彼を新しい家族から排除します。
聡自身は、新たに見つけた家族の温かさにより、かつての野生のような性質から優しい人間へと変わりつつありました。
この変貌を目の当たりにした獒春は、再びショックを受けます。
獒春は、その純粋な悪への憧れから、聡が牙を失ったことに失望し、聡が再び悪の道を歩んでほしいと願い始めます。
聡と彼の新しい家族が、経済的に困窮していることをチャンスと思い、強盗を計画して金銭を得ようとします。
この計画により、獒春は聡たちを巻き込み、自らの求める刺激と共に悪への道を進むこととなります。
ホステルを崩壊させようとする
聡が新しい家族として結成した時に「HOSTEL」と名づけた集団には、家族のある獒春や穂乃果は含まれていません。
獒春は自分がHOSTELの一員ではないこと、そして聡が次第に変わっていくのを受け入れられませんでした。
そのため、HOSTELが崩壊するように陰で画策します。
HOSTELを解散させるには、極めて冷酷な手段を講じる必要がありました。
事の発端は、HOSTELが一刻会からの襲撃を受け、聡たちが重傷を負った事件です。
聡は「一人では皆を守ることができない」「このままでは全員が危険に晒される」と感じ、姿を消します。
この時点で、穂乃果はすでに聡の子を妊娠していました。
獒春はまず、聡と穂乃果の関係を破壊しようと計画し、聡に成りすまして穂乃果に赤ちゃんを堕ろすように伝えるメッセージを送ります。
穂乃果はメッセージを聡からだと思い込み、深いショックを受けます。
さらに穂乃果の母親を騙して、警察にHOSTELの存在を報告させるなど、様々な策を用いました。
結果的にHOSTELは、事実上の解散を迫られることになります。
無痛症を武器として活用
獒春は、幼い頃から受けた精神的虐待の影響で、普通の人が感じる感情や痛みを感じない状態にあります。
通常、彼は周囲に痛みを感じているフリをしたり、感情を表現することでこれを隠していました。
しかし、HOSTEL解散後に譲に見出された獒春は、その無痛症を武器として活用することになります。
譲は獒春のこの特異な能力に注目し、彼をその能力を生かす方向で徹底的に鍛え上げることを決めたのです。
ホステルを支配的する立場に
元々、ホステルは一つのチームでしたが、聡の不在によりAとBに分裂してしまいます。
獒春は、ホステルAの支配的な存在「ビッグダディ」としての役割を果たし、チームをまとめ上げる中心人物として暗躍します。
彼は彭鎮洋、郭靑虎、倉木文太、堀本美栄などをチームメンバーに迎え入れ、その勢力を拡大していきます。
聡に受け入れられず自ら命を絶つ
獒春の率いるホステルは、蛍介たちが率いる才源高校や、単独行動をとる神谷ヨハン。
そして帰還した聡が率いる、ホステルとの間で大規模な衝突に発展します。
この戦いで、かつての憧れであった聡との再会を果たした獒春は、激しい殴り合いを演じます。
しかし彼の最後は、ホステルという概念に対する憧れを他の人々に訴えかけた後、笑顔で自ら飛び降りる形で自死を選ぶのです。
獒春という人物は聡のため、そして自身の信じる理想のために数多くの過ちを犯し、多くの人々に傷を負わせてきました。
結局のところ、彼は自らの行いに耐えられず、その重荷から逃れるかのように自死を選びました。
彼の人生は、最終的に聡に受け入れられることなく、孤独なまま終わりを迎えるという、悲しくも同情を誘う結末となりました。
まとめ：人間の脆弱性と強さを描き出す
この物語は、獒春という若者が主人公の聡とその周囲の人々との関係を通じて、内面の変化と成長、そして最終的には悲劇的な結末を迎える過程を描いています。
獒春は、厳格な家庭環境と精神的な虐待の影響で、通常の人間関係や感情に対する理解が欠如している状態から物語が始まります。
彼は自由で純粋な悪を貫く聡に強く憧れ、その影響で次第に歪んだ行動を取るようになります。
獒春がホステルという集団の中で、ビッグダディとして支配的な役割を果たし、一時は自らの居場所を見出すかのように見えます。
しかし、聡との関係やホステル内の動きを通じて、彼の行動は次第に自己破壊的な方向へと向かいます。
最終的には、獒春はホステル編の終焉とともに、自らの命を絶つことで物語は終わります。
獒春の選択が、彼自身と周囲の人々に与えた影響を深く掘り下げています。
獒春の悲劇は彼が経験した環境と、彼が抱いた歪んだ憧れと期待によって加速されました。
彼は理解と受容を求めましたが、最終的には孤独と絶望の中で終わりを迎えます。
全体を通して家族の形、社会からの逸脱、そして人間関係の複雑さを探求し、特に若者が直面するアイデンティティと所属の問題に光を当てています。
獒春の物語は環境と内面の闘争、そして自己認識の旅を通じて、人間の脆弱性と強さを描き出しているのです。
