「薬屋のひとりごと」で注目される、謎めいた楼蘭妃(ろうらんひ)に焦点を当てます。
楼蘭妃は阿多妃(アードゥオヒ)の後に、宮廷へと加わりました。
楼蘭妃は皇帝に選ばれたわけではなく、高位の父親である子昌による後押しで宮中に滑り込んだのです。
表情や服装を見ても、猫猫でさえ楼蘭妃の性格を読み解くことができません。
楼蘭妃には他の妃たちとは異なる、特異な点がいくつも存在します。
謎に包まれた、楼蘭妃について深堀りしてみましょう!
楼蘭の謎めいた目的と真の正体
楼蘭妃は阿多妃の後、皇帝の淑妃として宮中に迎えられます。
彼女は例に漏れず、多数の侍女を連れて入宮し、その都度服装や化粧を変えるという特徴を持っていました。
これにより、主上は「全く異なる人物と会うようだ」と混乱していました。
この「全く異なる人物」こそが楼蘭妃の狙いです。
楼蘭妃は上級妃として宮中に潜入し、多くの侍女を使って自身と入れ替わり、下女に扮して後宮内で情報を集めることが目的だったのです。
しかし、これには楼蘭にどのような利益があるのでしょうか?
正体は子翠(シスイ)
まず、楼蘭妃の正体は「子翠(シスイ)」であることが判明します。
子翠は隊商が来る直前、楼蘭妃が宮中に入る頃から現れ始めます。
彼女は初めての登場時、鈴麗公主が猫猫たちと散歩しているときに、子猫を追いかけて見つけた場所にいました。
その子猫を助けたのが、子翠です。
子猫がどうして、そこにいたのか?
そして、その子猫を子翠が助けたのか?については疑問が残ります。
楼蘭妃が子翠であることがわかってから、その子猫も何かの計画だったのかと思われがちです。
しかし、子猫は生き物であり、汚れていたことから偶然の可能性が高いです。
父は高官の子昌、母は元皇帝妃の神美
楼蘭妃、すなわち子翠の父親は高官の子昌で、母は元皇帝の妃だった神美です。
この計画は、母の神美の逆恨みから始まったようです。
主上が神美を子昌に嫁がせたのは、先帝の好み(ロリコン)を隠すためであり、お手付きのない妃を高官に嫁がせたのです。
神美にとって、皇后を目指す自信があったため、この結婚を厄介払いと感じていました。
その小さな誤解が、やがて一族を巻き込む大きな問題へと発展してしまいます。
翠苓とは異母姉妹の関係
翠苓(スイレイ)は、猫猫が外廷で勤務を始めた際に出会った、侍女です。
翠苓自身は、侍女たちの取り巻きに巻き込まれた形で、猫猫に対して特に興味を持っていませんでした。
しかし、子翠とは異母姉妹であったため、彼女を利用する機会として見ていたようです。
翠苓は「なぜ猫猫が壬氏に気に入られているのか」と気にしておりましたが、猫猫は巧みにそれをかわします。
改めて振り返ると、翠苓は猫猫に近づき後宮の情報を得たかったのでしょう。
壬氏に気に入られていることは明らかでしたから、近づくことで何か利益を得ようと考えたのです。
しかし、猫猫は花街での経験から警戒心が強く、情報を漏らすことはありませんでした。
これには子翠も翠苓も、予想外のことだったと言えるでしょう。
神美の目的は皇族への復讐
楼蘭の母、神美は先帝の妃でしたが、先帝の性癖を隠すためにひどく扱われ、一度もお手つきがなかったため、女性としての盛りを過ぎた後に子昌に下賜されました。
子昌の最初の妻は、自分より先に先帝に手をつけられた侍女です。
自分はお手つきもなく嫁ぎ入ったにも関わらず、逆恨みを抱き、「何か国に復讐できないか」と考えました。
その結果、復讐のために子翠を産み、さらに翠苓を巻き込んで、東宮を産ませて国を乗っ取るという計画を進めたのでした。
子一族を守るため自己犠牲する
楼蘭は母には恵まれませんでしたが、その頭脳は優れていました。
そのため、自らが犠牲となることを厭わず、子一族の子供たちを守ることに尽力します。
その手段として、蘇りの薬を使って一度死亡させた後に生き返らせるという、危険な方法を選びます。
法律が死者には適用されないという、抜け穴を利用する計画でした。
死人に口なしとは言いますが、この点に目をつけた楼蘭の洞察力には感嘆させられます。
薬や毒に詳しい猫猫を利用する
楼蘭は通常、侍女に扮して自らは下女として後宮に潜んでいました。
様々な情報を収集する中で、猫猫の薬や毒に関する専門知識を知り、それを利用したかったのでしょう。
猫猫が壬氏のお気に入りであることを利用し、近づくきっかけを作ります。
身代わりを設けて後宮から逃れる計画の一環として、猫猫をいざという時の人質にすることも考えていたのは、非常に用意周到です。
翠岺を神美の手から解放したい
楼蘭は「翠岺を神美から解放したい」と望んでいたようです。
神美にも翠岺にも罪はなく、怨むべきは先帝です。
しかし、母が先帝に手をつけられた侍女に嫉妬して、その子供である翠岺に対しても厳しい仕打ちを続けてきました。
楼蘭はそんな二人の姿を見て、彼女らを解放してあげたいと願っています。
神美や子一族の呪いから救い出すために、楼蘭は孤軍奮闘していたのです。
その後の楼蘭の運命はどうなった?
楼蘭は故郷に戻っていましたが、身代わりが発覚し謀反の疑いをかけられました。
その後、壬氏たちが猫猫を取り戻すために攻め込んできた際、楼蘭は砦に籠もります。
そして周囲が火に包まれる中、絶望的な状況から飛び降りてしまうことに…。
しかし、遺体は見つかっておらず、彼女が生き延びている可能性が高いとされています。
SNSでは楼蘭の境遇に同情する声が多く、彼女の運命に心を痛める人々が後を絶たないようです。
生き延びている可能性が高い
砦から飛び降りた後、楼蘭の遺体や痕跡が発見されなかったため、彼女が生きている可能性が高いとされています。
この推測を裏付ける証拠として、彼女のその後の様子が小説内で描かれています。
物語では、ある港町に一人の少女が姿を現します。
この少女が、生き延びた楼蘭であると思われるのです。
彼女は外見も美しく、かつて後宮で育った花のようだと評されることがありました。
「玉藻」と名乗る少女が再登場
その港町で「玉藻(ギョクヨウ)」と名乗り始めた少女は、見た目の美しさでも知られ、市場の人々からも好感を得ていました。
玉藻として名を変えた彼女は、海外への深い興味を持ち、遂には海を渡り異国へ旅立ちます。
猫猫との再会が実現するかは未定ですが、可能であればその再会を心から願っています。
また、玉藻が楼蘭である可能性を示す、根拠が存在します。
猫猫から受け取った簪を持っている
猫猫は楼蘭との最後の別れに、一つの簪(かんざし)を渡しました。
この簪は、以前壬氏から贈られた大切なアイテムで、園遊会で猫猫が身に着けていたものです。
簪を渡したことには、「生き延びて欲しい」「再び会ったときに返してほしい」という願いが込められています。
市場で食料と交換されたこの簪を持ち、楼蘭は「玉藻」として新たな土地へ旅立ちました。
遠く異国の地での新生活を始めた彼女ですが、いつか猫猫や小蘭との再会が叶うことを望んでいます。
作者も楼蘭の生存を示唆している
楼蘭が生きていることについて、作者の日向夏さんもブログで言及しています。
「玉藻の名前の意味が分からなければ、調べてみるといいです。」との発言がありました。
玉藻の名前は「水中に生える藻」という意味の古語です。
露天商の男が彼女の美しさを称え、「海の王に見初められそうだ」と述べたことは、その美しさが海の王にも匹敵する、という比喩だったのかもしれません。
これらの事実から、子翠=楼蘭=玉藻が同一人物であることが示唆されています。
「玉藻前」という名の平安時代の美女
玉藻という名前には、平安時代の「玉藻前(たまもぜん)」という人物が関連しています。
彼女は鳥羽上皇に寵愛され、朝廷において影響力を持っていた女性でした。
彼女の正体は妖狐であり、尾が9つに分かれる狐とされ、その後討伐されて石に変わり、「殺生石」と呼ばれるようになりました。
この石は近づいた人や動物を害すると言われています。
また、彼女は中国の伝説に登場する妲己と、同一視されることもあります。
妲己も王朝を支配し、多くの悲劇を引き起こしたとされる人物です。
楼蘭が人を欺くために姿を変えていたため、このような例えがなされることもあったようです。
さらに、壬氏が楼蘭妃を「狐」と呼んで冷やかしたことも、この比喩に影響を与えていると考えられます。
まとめ
以上、謎多き上級妃、楼蘭についての考察を行いました。
楼蘭の正体と目的について
・楼蘭妃の正体は子翠であった。
・楼蘭は日常的に侍女と身代わりを交代させ、子翠として後宮を行き来していた。
・薬や毒に精通する猫猫に近づいたのは、その知識を活用するため。
・壬氏のお気に入りである猫猫を、緊急時の盾として利用する計画だった。
・楼蘭の最終目標は、東宮を産み正妻の地位を獲得すること。
・その過程で他の妃が産んだ子供たちを間接的に排除していた。
・子翠は故郷の一族を神美の呪いから解放することを望んでいた。
・それを達成するために、蘇生の薬を開発しようとしていた。
その後の生存説について
・楼蘭が計画を進行中に発覚し、後宮から脱出した際に謀反と見なされ、胸を打たれて砦から落下した。
・遺体は発見されず、その後「玉藻」と名乗る少女が港町に現れた。
・彼女の容姿や持っていた猫猫から受け取った簪から、楼蘭であると推測される。
・玉藻は海を渡り、他国へ旅立った。
彼女の正体が猫猫と下女仲間の子翠だったことは驚きですが、行動の不自然さや共通点を振り返ると納得がいく部分も多いです。
楼蘭妃には複雑な事情があったとはいえ、罪のない子供たちに手をかける行為は許されるものではありません。
最終的には壬氏や猫猫も彼女を許し、逃がす決断をしましたが、楼蘭も彼らのために協力して欲しいと願います。
このような機会はもう訪れないかもしれませんが、いつかまた猫猫、小蘭、子翠の3人が一堂に会し、語り合う日が来ることを願っています。